テラと呼ばれる世界には「天災」と呼ばれる天変地異が周期的に襲いかかります。天災が過ぎ去った跡にはオリジニウムという鉱物が残り、その鉱物に長く触れた者は「鉱石病」にかかり「感染者」になります。
世界は感染者を病人ではなく脅威として扱います。特にウルサスという軍事帝国は、彼らに対して殊更に過酷です。
この物語は、そんな世界のとある崖っぷち、凍りついた一つの棺から始まります。棺の中には全ての記憶を失った一人が眠っており、人々は彼を「博士」と呼びます。

1. 棺の中で目覚めた人
冷たい手術台の上で、誰かが止まった心臓を再び動かします。心停止液を注入し、切開を始める切迫した声が飛び交います。
その声の一つが静かに謝ります。「……ごめんなさい。また痛い思いをさせてしまいましたね。」その主は最後まで名前を明かしません。
博士が目を開けると、そばで見守っていた少女が涙ぐみながら手を握ります。アーミヤです。つい先ほどまで、博士が目を覚まさないかもしれないと覚悟までしていたところでした。
そばのメディックは驚きます。博士の話になるとアーミヤがまるで別人のようになるのだと。それだけこの再会がアーミヤにとってどれほどの意味を持つか、うかがい知れます。
ところが博士は何一つ覚えていません。アーミヤのことも、自分の名前も、これまでの全てを。
アーミヤはその前で崩れません。自分をロドスアイランドの一員だと紹介し、博士が最も大切な仲間だと何度も伝えます。今すぐ思い出してとは言わないから、少しだけ時間をくれと言いながら。
博士を取り戻すまでにどれほど大きな代償を払ったかは、飲み込んでしまいます。代わりにこうとだけ言います。あまりに多くのものが変わってしまったけれど、博士が最も大切な人だということだけは変わらないと。

2. 見知らぬ人に指揮棒を託す
その束の間の再会の瞬間、施設に武装集団が押し入ります。重火器で武装した感染者組織、レユニオンです。
遮蔽物の陰に博士を隠したオペレーターたちが、切迫した声で叫びます。ケルシーとの通信は途絶え、誰かが電波を妨害しています。
通信は途切れ、今回の作戦の指揮官であるケルシーとは連絡が取れません。アーミヤは危険を承知の上で、目覚めたばかりの博士に指揮を頼みます。
根拠はただ一つ。記憶は失っても、博士がかつて共に戦った仲間だということ、そして彼への揺るぎない信頼です。
博士を再び戦場に立たせることは、アーミヤにとっても辛いことです。それでも今ロドスアイランドには博士の知恵が必要だと言い、この戦いで感覚を取り戻してほしいと告げます。
きっとできます。私はそう信じています。ロドスアイランドを……指揮してください……!
— アーミヤ
博士の指揮のもと、最初の戦闘は完璧な勝利で終わります。体は覚えていなくても、指先はまだ戦場を読み解いています。

3. 三時間
戦闘が終わると、もう一つの行動隊の隊長ドーベルマンが合流します。彼女のチームもレユニオンの襲撃を受け、急いでこちらへ渡ってきたところです。
記憶を失った人に指揮を任せたと聞いて、ドーベルマンは呆れます。初対面の人間を簡単に信じる性格でもありません。
それでもたった今の指揮をその目で見た以上、アーミヤの言葉を一度信じてみることにします。博士に自分を行動隊E1の隊長だと名乗り、チェルノボーグからロドスアイランドまで護送すると告げます。
ちょうどその時、神経コネクタが思いがけず作動し、支援システムPRTSが接続します。電波通信が塞がれている今、まだロドスアイランドに戻っていないケルシーとは繋がりませんが、博士に次の手を知らせる窓口だけは開かれた形です。
指紋で権限を確認したPRTSが、淡々と挨拶を交わします。「お帰りなさい、博士。」
移動の準備を終えたドーベルマンは、アーミヤにだけそっと事実を伝えます。三時間後、この都市に天災が落ちると。
それまでにチェルノボーグを抜け出せなければ、全員終わりです。チームが動揺することを恐れ、ドーベルマンはそのカウントダウンをまだ誰にも知らせていません。
4. 感染者たちの方舟
退却の途中、博士は再び尋ねているようです。感染者とは何なのかと。
アーミヤは淡々と答えます。自分も、ドーベルマンも、ロドスアイランドの大半も、そしてついさっき戦ったレユニオンでさえも、同じ病を患っていると。
それが鉱石病です。罹った者はどこにいても追われ、ウルサスは感染者への恐怖を煽る報道でその迫害を正当化します。市民はむしろそれに拍手を送ります。
その抑圧こそが、レユニオンがこの都市を狙った理由でもあります。抑圧された感染者たちにとって、レユニオンは一つの出口のように見えるのです。
一方では、メディックのオペレーターが注射から逃げようとするガードを捕まえて言い争っています。症状を和らげるには定期的な治療が必要だと言いながら。この騒がしいやり取りこそ、ロドスアイランドという場所の日常です。
ロドスアイランドはその狭間で二つのことを同時に背負っています。鉱石病を治す方法を探しながら、感染者が絡んだ紛争を収めること。
どちらか一方に偏っては、感染者たちの命を守れないからです。ドーベルマンは博士にそれとなく言います。自分も感染者だから、こうした事柄をこれから博士が背負うことになるかもしれないと。
避けられる戦いなら、沈黙を守り……避けられない戦いなら、最後まで戦え!
— アーミヤ

5. 燃えるチェルノボーグ
通りに出ると、都市は既に地獄と化していました。爆発と火災、市街戦が入り乱れ、レユニオンはウルサス市民を無差別に襲います。
それなのに宣伝放送は平然と「状況終了」を繰り返しています。画面の外の現実では、憲兵隊がレユニオンに押されて崩れているというのに。

ロドスアイランドは市民を盾にするレユニオンを撃って道を開きます。途中で出会ったウルサス憲兵隊長は、感染者である彼女たちを蔑みながらも、都市を破壊しに来たのでなければ構わないと道を譲ります。
憲兵隊長は、感染者の娘たちが何の目的で来たのかには興味がないと言い切ります。ただし都市を破壊しに来たのなら、ウルサスの怒りは死ぬまで止まらないだろうと。自分の持ち場を守る者の気概です。
そして彼は一人残って通りを死守し、倒れます。「ウルサス人は決して敵に背を見せない」という言葉を残しながら。

6. 失ったものは取り戻せばいい
次の合流地点で、ベテランリーダーのエースが一人で出迎えます。彼は万一の事態に備えてチームを合流地点に配置し、危険要素だけを自ら片付けに出てきたところです。
博士が記憶を失ったと聞いても、エースは動じません。指揮能力に問題がなければそれでいいと言い、博士の指示に従うと告げます。
失ったものは取り戻せばいい。
— エース
レユニオンは感染した獣まで兵士として放ちます。ドーベルマンはそれらが単なる野獣ではなく、自分たちにより近い存在だと気づき、エースはそれらを苦しみから解放してやるしかないと言います。
三人はレユニオンの正体を反芻します。制服と印さえ身につければ誰でも受け入れ、憎しみと恐怖を糧に無限に膨れ上がる兵力。
そしてその兵力を駒のように使い捨てる頭目。ドーベルマンはそんな者を指揮官ではなく「暴君」と呼びます。敵を踏みにじるために味方さえも踏みにじる者だと。
ドーベルマンは苦々しく付け加えます。檻に小さな穴を一つ開けてやれば、中に閉じ込められていた者たちは外が火の海だろうと構わず飛び出すものだと。レユニオンはまさにその切迫感を燃料にしています。
エースはその言葉に、かつて誰かが聞かせてくれた一言を思い出します。駒なら奪えばそれまで、城なら陥落させればそれまで、王権なら打ち崩せばそれまでだと。敵が誰であろうと、ロドスアイランドは任務を遂行するだけです。
7. ゲームを仕掛ける少年
最後の合流地点を前に、霧と共に待ち伏せが襲いかかります。顔を隠したレユニオンの工作員クラウンスレイヤーがロドスアイランドに追いついたのです。
しかしすぐ後に現れた別の人物が彼女を追い返します。クラウンスレイヤーは「お前が惨敗することを期待しているよ」という言葉を残して退きます。
メフィスト。感染者たちを駒のように正確に操る少年指揮官です。彼はロドスアイランドの戦い方が面白いと言い、生き残りさえすれば見逃してやるという「ゲーム」を仕掛けてきます。
彼が本当に欲しがっているのは博士です。あの施設で一体どうやって生き延びたのか、お前は一体何者なのかとしつこく問い詰め、博士を贈り物として差し出せと言います。
天災が目前に迫った時こそ……祭りを開くのにうってつけの時じゃないか?
— メフィスト
メフィストの指揮はぞっとするほど正確です。狂暴化した感染者たちを一人でチェス盤のように動かし、退路を一つずつ封鎖してロドスアイランドを追い詰めます。
彼の号令一つで感染者たちが精巧に陣形を変えます。キャスターをディフェンダーの後ろに隠しておき、ロドスアイランドの隊列が崩れた瞬間を狙って浴びせかけます。
そして死ね、雨降る夜の火花のように!
— メフィスト

8. カジミエーシュの騎士
戦況が傾きかけたその時、信号弾の位置を正確に見定めて駆けつけた援軍が、レユニオンの陣形を横から打ち砕きます。カジミエーシュの騎士ニアールです。あらかじめ市民たちまで避難させた上で。
メフィストはそばの寡黙な狙撃手ファウストにニアールを狙わせます。ファウストの狙撃は複数箇所から同時に飛んでくる十字砲火で、他のチームが受ければ一瞬で全滅するほどです。
ニアールはその狙撃を盾で受け止めます。エースが稼いでくれたわずかな時間に乗じて敵陣の真っただ中へ突撃し、包囲網をまるごと引き裂きます。
本気でカジミエーシュの騎士を倒すつもりなら……あと数十年は訓練を積んでから来い!
— ニアール
包囲を抜けた後、エースとニアールはあの狙撃手について反芻します。爆発のわずかな時間差から見て、ファウストは一人ではなく複数の場所に分かれて存在しているようだと。レユニオンは予想よりはるかに危険な相手です。
ニアールは自分の指揮に自信が持てない博士に一言かけます。危険を避けられたのは自分の判断ではなく博士の指揮のおかげだったと言い、もう少し自信を持てと。
そして博士が記憶を失ったという話を聞いても、大したことではないかのように笑います。自分の友人にも記憶を失った者がいると言いながら。
あなたにとって一番大切なのは、消えた記憶ではなくきっと「今」なんでしょうね。
— ニアール
エピローグ――未完、続く
博士一行が都市を抜け出す間、メフィストは退きながら追跡をファウストに任せます。自分は「姉さん」に状況を報告しなければならないからと。
ニアールを最後まで捕らえられなかったファウストが、自分の失態だと謝ります。メフィストは興奮しすぎた自分の落ち度だと狙撃手をなだめます。何よりお前自身の安全が一番大事だと。
その姉さんは既にチェルノボーグの中央司令塔を手に入れていました。害虫のようなロドスアイランドを生かすも殺すも、今や彼女が決める領分です。
同胞たちよ。さあ、出発しよう。我らの時代を迎えに!!
— メフィスト
全ての記憶を失い棺の中で目覚めた博士は、自分を信じてくれた一つの手を握り、燃える都市で再び指揮棒を手にしました。失ったものは取り戻せばよく、最も大切なのは消えた過去ではなく「今」だから。そして天災まで残された時間は、まだ全て流れ切ってはいません。